コラム

ワカスタ×Pairs対談。若者の恋愛スイッチを押すには「煽り」がカギとなる。

ワカスタ ビジコンで生まれた、大学生の恋愛プライドを揺さぶる「煽りレタープロジェクト」の舞台裏

2012年、ADKマーケティング・ソリューションズ 若者プロジェクトリーダーである藤本耕平によって創設された「ワカスタ」。
そのワカスタの象徴的なイベントとされるのが、若者と一緒に企業の課題を解決するマーケティングアイデアコンテスト『ワカスタ ビジコン』である。2014年にスタートし、今年10年目を迎える。この間、延べ約4,000名以上の学生が参加し、自分の本音にとことん向き合うことで、参加企業の抱える課題解決の一助となってきた。

様々な企画が生み出されてきた中、2021年大会で最優秀賞を獲得した「煽りレタープロジェクト」が現実のものとなった。
当時、協賛企業として参加し、課題を提示したのは、株式会社エウレカ。恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs」の運営を行っている。お題は「大学生がペアーズを利用して恋愛したくなる仕掛けづくり」。そして見事優秀賞を獲得したのは、東北芸術工科大学在籍のメンバー4名で構成される「高騒動の住民」チームである。

今回、ワカスタ創生者である藤本、エウレカの本多さん、ペアーズコンシェルジュの大道さん、「高騒動の住民」メンバー、東北芸術⼯科⼤学デザイン⼯学部の加藤⽊さんの4名でワカスタ ビジコンの魅力と、「煽りレタープロジェクト」について対談を行った。

写真左から、エウレカ 本多さん、ペアーズコンシェルジュ 大道さん、ADK MS 藤本、東北芸術⼯科⼤学デザイン⼯学部 加藤⽊さん

共に成長するきっかけに。

藤本耕平(以下、藤本):ペアーズさんは2021年大会にご参加頂きましたが、ワカスタ ビジコンに参加されてどのような印象を持ちましたか?

本多由美さん(以下、本田):すごく仲の良いチームで、同じ目的を持って動いていることが良かったです。また、企画提案のマナーや情報リテラシーが高く、器用な印象を受けました。

加藤木崚輔さん(以下、加藤木):仲は良いのですが、メンバーそれぞれ、物事を見ている目線が違うので、個人の価値観をすり合わせる作業が大変でした。ただ仲良いだけのグループで終わるのではなく、お互いの価値観を話し合ったことで、ビジコンを通して、クリエイターとしても、グループとしても強くなれたというところでは、友達とはまた違う、いい関係性を築けたと思います。
また、大学の後ろ盾もなく、自分で考えたアイデアや企画を伝えることが出来る場であったことが、とても貴重でした。

若者の恋愛ホットボタンはどこに?

藤本:ビジコンでペアーズさんが出したお題は、「大学生がペアーズを利用して恋愛したくなる仕掛けづくり」でしたね。このお題を出した背景は何だったのでしょうか。また、加藤木くんたちはこのお題を解決するために、どのような提案を行ったのでしょうか。

本多:マッチングアプリの利用はコロナ禍に急増しましたが、行動制限緩和を背景に20代前半のユーザー層の需要が停滞している状況でした。そういう状況の中、我々も直に若者と接する機会や、声を聞く機会が少なくなっている、という危機感を抱いていました。
若者は想像以上に堅実で、大人が思うほど恋愛に対して関心がないのではないか、という分析をしていましたが、その理由や深堀りを若者から直接聞いて、施策を通じて彼らに刺さる恋愛のホットボタンを押してほしい、という想いでこのビジコンに協賛参画させていただきました。

加藤木:結果から言うと、ペアーズさんのご要望にジャストフィットしつつ、大学生の心を動かすことが出来る、そんな企画を作ることが出来ました。しかし、そこまでの道のりはスムーズではなく、途中途中でADK社員の方にメンターとしてサポートを頂きながら、企画をブラッシュアップしていきました。

大学生の目線でマッチングアプリと向き合い、何が最適なのかを考え、そして「マッチングアプリを使わない原因は、大学生特有の恋愛プライドが邪魔していることにあり、そのプライドを壊して次の一歩へと繋げるためには、自虐ネタにつながる‟煽り”が一番効果的な解決策である」ということが発想の最後の着地点になりました。

大学生がマッチングアプリを使わない理由は“プライドが邪魔をしている(マッチングアプリでしか恋愛できないやつだと思われたくない)”という現状分析のもと、それを乗り越えるためには、友達からネタにされ笑いになることで、プライドよりも笑いを優先する、という大学生特有の心情を活用した仕掛けを作りました。

企画書はこちらからご覧いただけます。

本多:弊社が行っている調査でも「マッチングアプリは出会いの最終手段」とされる割合が多いことは分かっていましたし、その中でも特に、大学生は友達からどう思われていることを気にすることは肌感覚としてありました。なので、プライドがボトルネックになっている、ということはすんなりと腹落ちしました。

また、当時(2021年11月)マッチングアプリで初となるPairsプリペイドカードを発売したころで、自身の利用だけでなく、友人へのギフトとして利用を訴求したいと思っていました。そういった背景もあり、Pairsプリペイドカードを活用してポップなネタで煽って、それ自体がネタとして共有・拡散できるというアイデアは、満場一致で優秀賞に決定しました。

Pairsプリペイドカード。コンビニや薬局などで売られている

「煽りレタープロジェクト」として企画が現実のものに。

藤本:そしてコンテスト終了後、正式に「煽りレタープロジェクト」として、企画実現に向けてペアーズさんと加藤木くんたちで動き始めたんですよね。

加藤木:はい、隔週でやり取りをさせて頂きました。今回の企画は自分が手がけた初めてのプロジェクトで、すごく思い入れがあったので、どうにかして実現させたい、という想いがありました。

本多:弊社の社長にも提案をしたところ、面白がって是非、ということになりました。芸工大の学長も交えてオンラインミーティングを重ね、2023年の冬に芸工大でのポスター展示と学生向けの恋愛セミナー、そして煽りレター誕生までの軌跡を残すべく展示会を実施することになりました。ペアーズとしても学生と密に企画を練る機会は初めてでしたね。

加藤木:まず、恋愛セミナーの告知を兼ねたポスター展示では芸工大のデザイン工学部と美術学部の2学部に合わせた恋愛あるあるを記載して大学内に掲示しました。

大学特有の恋愛あるあるを書いたポスター展示。イラストも自分たちで作成した

藤本:芸工大バージョンの煽りポスターというのは自分たちも考えて楽しかったと思うけど、周りの反応はどうでしたか?

加藤木:「あの煽り文言はあるあるだよね」など、いろんな人から連絡もらいました。すごく反響が良くて、一つの火付け役にはなったと思いました。ポスターを作成するうえで意識したこととしては、世間一般の恋愛模様をキャッチコピーにするのではなく、大学内の恋愛における共通認識をコピーにまとめて、共感してもらえることを意識しました。

芸工大恋愛あるあるの一例

その後2023年末、大学生向けにオンラインで「芸工大vs Pairs 恋愛ぶっちゃけトークセミナー」を開催しました。
セミナーといっても、一般的な形ではなく、大学生目線でよりカジュアルでポップな形式にしたいと思っていました。

大道枝里さん(以下、大道):当初、セミナーで使用する資料は、ペアーズコンシェルジュが普段講演のときに使用する、初めてマッチングアプリを使う人向けの資料を流用できると考えていました。しかし、加藤木さんと議論しているうちに、ほぼ全部使えない、となってしました(笑)初心者向けの資料には、ダウンロード方法やプロフィール設定についての基礎的な説明があるのですが、やはり大学生はアプリの使い方の説明よりも、恋愛することの必要性を訴求することが重要だと気づきました。

また、セミナー実施に際し、大学生に事前にアンケートを取ったのですが、「理想の恋人に求めることは?」という質問に対して、「アルバイトで疲れているときに癒してもらえる」とか、「授業や学校のことが頑張れるような存在」という回答がありました。一見承認欲求に捉えられがちですが、実はやっぱりみんな悩みを抱えていて、自分の気持ちに素直になれず、友達の前で言うことができないようです。そういったことを意識したので、結果的にすごく面白い資料に仕上がりました。

トークセミナーの様子。参加者でPairsプリペイドカードのプレゼント抽選も。

大道:友達にどう見られているとか、輪の中での自分の立ち位置って大学生はすごく気にする、ということは仮説を立ててはいたのですが、本プロジェクトを通して改めて再認識できました。しかし、まだまだ若者の恋愛観はわからないことが多いです。

藤本:若者の恋愛は本当に本音部分では何を考えているか分からない、何が行動のきっかけになるか分からないというような、見えない部分が多いですからね。

本多:“若者を動かす”って思っちゃいけないかもしれないですね。そういう姿勢をもった瞬間に、嫌がられますよね。

藤本:だからこそ、ワカスタ ビジコンのように、学生と企業が共に企画を作っていくことが大切ですよね。押し付けではなく、彼ら彼女らの求めていることや意見を取り入れながら、企業が動いていくべきですね。若い人を“動かす”と思わずに、一緒に課題を解決するための方法を考えていく。改めて、ワカスタ ビジコンの取り組みは意義があることだと思いました。

当事者だからこそ。本音から生まれる、飾らない企画

藤本:改めて、ワカスタ ビジコンの魅力を教えて頂けますか。

本多:単なるアンケートでは、型にはまった回答になりがちですが、ワカスタ ビジコンは “企業の課題を解決する、その先のビジネスに貢献する”という実利に主眼を置いている点に、魅力があると思います。“売ってほしい”ことを念頭に、話をするのは企業としてすごく意味のあるものでした。
また、学生だけで考えた企画だと、どうしても狭い世界での話になりがちですが、ADKの社員の方がメンターとしてサポートしてくれることでさらにいいものになる。今後もそういうやり方が継続するとよいと思います。

ワカスタ ビジコンでは、メンター社員の選択の他、プランニング基礎講演やスキルアップセミナーなど、様々な学べる場を提供している。

藤本:メンター社員も業務で忙しい中、学生たちと向き合うのは大変だと思うのですが、彼らも学生と話すことで刺激を受けていると言ってくれています。自分たちにはない視点を学生は持っているので、お互いWin Winになれているのだと思います。
また、グループインタビューやデプスインタビューでは、恥ずかしさがあってつい体裁で答えたり、自分の中で答えが出ないこともありますよね。恋愛の話になってくるとなおさら難しいですよね。

今回のビジコン参加者の中には、若者100人以上にインタビューして様々な角度から若者のインサイトを検証してくれた情熱あふれるチームもいました。インタビューで出てくるその場での浅い答えより、長い期間、若者の視点で本気で議論しながら、周りのいろんな人の意見も聞いて、本音ベースで考える企画の方が、より信頼度が高くなると思います。

加藤木:僕は「大学生が大学生のために企画する」というところが、すごく魅力だと考えています。やっぱり、当事者としての目線で企画を作るということは、他のビジコンと違うと思っていて、大学生同士で本音会話して生まれる飾らない答えが、一番心動かすポイントになると思います。

未来のビジコン参加者へ。

加藤木:一個人として企業と関わることができる非常に素晴らしい機会だと思います。大学の後ろ盾もなく、アイデアだけで勝負が出来ることは、おそらくインターンでも経験できないことではないでしょうか。
そして、この経験によって、将来の選択肢の幅も増えると思います。僕自身、この経験がすごく就活に生かされました。企業の方と密に会話できたことで、自分自身の働いている姿を想像することが出来ました。経験値を積むためにも、ワカスタ ビジコンに挑戦することをおすすめします。

本多:楽しんで参加いただくのが一番だと思います。課題に対して、企業と学生がどういう手段で解決できるか、と議論を重ねることは我々にとっても非常にありがたいことでした。

藤本:本日はありがとうございました。今後のワカスタ ビジコンにも是非、ご期待ください。


【本件に関する問合せ先】
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
 EXデザイン本部 藤本 
 https://wakasuta.com/ ワカスタHPの「contact」よりお問合せください。

株式会社ADKホールディングス 
 経営企画本部 PR・マーケティンググループ 内山 e-mail:mspr@adk.jp

ADK Marketing Solutions Inc.