コラム

【フロントラインレポート】企業・ブランド課題を解決する、 キャラクター愛に裏打ちされた「心動かすIPコラボ」とは。

EXデザイン本部 第4EXクリエイティブ局 クリエイティブディレクター 村上絵美

企業やブランドのマーケティング活動として、アニメや漫画、キャラクターなどIPコンテンツを活用したプロモーションは常に注目され、年間を通して多くの企業がコラボ企画を実施しています。IPコラボには、ブランド認知の向上や売上げの伸張、消費者との関係強化など多くのメリットがあり、今後も企業のビジネスチャンス拡大を目的に継続的に取り入れられることが予想されます。

今回のフロントラインレポートは、当社の強みであるIP領域をけん引するクリエイティブディレクター村上絵美が登場。これまでの経験と実績を踏まえて、企業・ブランドとキャラクター・コンテンツによるコラボレーション効果を最大化する“得意技”を解説します。
※本レポートにおける「IP」とは、アニメや漫画、ゲーム等コンテンツやキャラクターを指します。

-ふだんは、どのような業務を担当されているのですか?

村上:タレントを起用したいわゆる企業・ブランドのコミュニケーションにも取り組んでいますが、ここ数年は、さまざまなカテゴリーのクライアントのIP関連業務が急増しています。

特に、企業やブランドにIPを掛け合わせたコラボ企画が多く、IPライセンシー商品の広告やブランディング領域、IP作品自体の宣伝やグッズのデザインも担当。直近では音楽アーティストのイベントのクリエイティブにも携わっています。
もともと大学ではデザインを専攻していたことからアートディレクションを軸としたCDとして、子ども向けから大人向けまで幅広いIPコンテンツのクリエイティブに取り組んでいます。

IPコラボは、単なる広告に留まらず、コミュニケーション全体で創造性を発揮する

-さまざまなIPコラボに取り組まれているようですが、村上さんにとってIPとは?

村上:自分もそうですが、みなさんも子どもの頃や青春時代に接触したキャラクターに感情を動かされた記憶があるのではないでしょうか。アニメや漫画、キャラクターの歴史と自分の思い出はセットになっていると思います。

現在進行中の作品であれば、今まさに心を動かされている最中ですし、久しぶりに昔の作品に触れた時にはその当時の出来事や感情をあわせて思い出すといったように、実はIPは身近な存在になっていると感じています。

以前は、アニメやキャラクターに愛情の深い一部の人たちがオタクと称されていましたが、最近は「1億総オタク時代」と言われているように、IP好きであることを誰もが堂々と表現でき、IPは日常生活にすっかり溶け込んでいると思っています。持ち物にキャラクターグッズを付けている人も街でたくさん見かけるようになりました。

また、IPビジネスの市場は着実に拡大しており、今後も成長が期待されています。音楽業界でもアニメの主題歌が上位を占めそれが世界に一気に広がったり、映画の興行でもアニメが上位を独占するなどIPはまさに日本が誇る文化になっていると感じています。

コミュニティが大きいのも特徴で、ひとつの作品を好きな人もいますがIP自体が好きな人も極めて多く、ファンの方々に加え声優さんや作品側のクリエイターの方々、ファンを公言している有名人の方などを巻き込んで拡散できたりするとより力強い展開に繋がっていくと実感しています。

IPを通じて企業やブランド、商品のメッセージを発信することは、単なる広告としてではなくコミュニケーション全体に創造性を持たせることができ、さらにはエンターテイメントとして変換できることがIPコラボの醍醐味だと思います。

-クリエイティブワークの中でも、IPコラボに注力することになったきっかけは何ですか?

村上: ADK入社後すぐに、玩具メーカーをはじめとしたさまざまなIP課題と向き合うことになりました。なかでも国民的炭酸飲料とIPコンテンツを掛け合わせたクリエイティブ開発に長年関われたことで実践的な経験を積めたことや版権元さんとの接点が生まれたことなど、IPに携わるうえでの作法も身に着けながらコラボ企画の本質的な部分を吸収していったように思います。

IPコラボに関わり始めた当時は、今のようにSNSの反応を正確に把握することはできなかったのですが、そのコラボならではの面白みを創造することやブランドとIPの掛け合わせでイメージをがらっと転換するなど、若いころからIPのポテンシャルを最大化することを考えながら数多課題に取り組めた経験は、今も活動の足場として活きています。

ブランドとIPをつなぐ「立脚点」を見つける

-ブランドとキャラクター・コンテンツを掛け合わせるコツについて教えてください。

村上:まず、企画にあたって人気の高いIPに注目するのはもちろんですが、作品への理解をはじめ、キャラクター・ストーリーの魅力を徹底的に洗い出すことで、ブランドや商品のメッセージとIPをつなぐ「立脚点(両者が重なるポイント)」を見つけることに注力します。立脚点を見つけることはそのブランドらしさを表現することになり、企業やブランドとIPの組み合わせの「必然性」に繋がります。

次に、企画が採用された後に重要となるのは、「版権元さんから全面協力を得るための準備に手を尽くす」ことです。我が子のようにIPに愛情を注いでいる方々に対して、「この企画は作品やキャラクターをよく理解してくれている! 面白そうだからやってみたい!」と瞬時に思ってもらうための取り組みは必須です。そのために、提案段階からほぼ完成形のイメージを共有できるよう精度の高いラフの作成には全力を注ぎます。

また、人気のIPであればそれだけファンは大量のコラボクリエイティブと接しています。そのような状況を鑑み、仮に自分がファンだとして最も嬉しいと思えるのは“作り手側の作品愛”と“目新しさ”であり、“目新しさ”はまだ見ぬキャラクターの魅力を引き出す事、その手法のひとつに「描き下ろし」があります。

ただ、実際に「描き下ろし」は大変な作業になるため、版権元さん達に対しては常に誠意を持って丁寧な作業で向き合いながら良好な関係づくりを心掛けています。皆さんからの信頼度を上げることで円滑な進行はもとよりファンの方々が喜ぶ企画の実現性を高め、クライアント企業への還元に繋がると思っています。

ポイントの最後は、コアファンの方々に刺さる企画に挑戦することです。企業・ブランドのファン層を拡大するためには、広く遍く直観的に伝わる企画を意識しますが、コアなファンへのアプローチでは、そのコミュニティでの熱量を沸騰させるようなマニアックな企画にこだわります。「こんなコラボしてくれて〇〇(クライアント企業)さんありがとう!」とのメッセージを多くもらえることを目指して、ファンにとって価値のあるものとなるよう新しいアイデアとアプローチを模索し、従来の枠にとらわれないコラボレーションを追求しています。

他社と差別化するポイントは、世の中をハッとさせる「意外性」

-一方で、世の中にはコラボ企画が数多ありますね、その中で差別化するには?

村上:最近は、同時期に同じIPを起用したキャンペーンが展開されることも多く、クリエイティブが似てしまうこともあり、実際にファンの方の間でも“コラボ疲れ”が生じていると思います。

このような状況で差別化を図るためには、ブランドとキャラクターを繋ぐ“立脚点”はもとより、企業・ブランドとIPの掛け合わせに「意外性」を持たせることが鍵となります。意外な掛け合わせを実現するためには運やご縁もあるのですが(笑)、そのコラボでしか実現できない、納得性があって新しいIPの見せ方やクリエイティブ表現には徹底してこだわります。

例えば、ロングセラー作品であれば敢えてマイナーキャラを推すプロモーションを展開することもあります。企画の段階からファンや世の中をハッとさせる驚きや期待感の創出を意識し、他社には真似できない唯一無二のコラボに仕上げることが差別化のポイントだと思っています。

企業・ブランド課題に対するコラボ企画の可能性とは

-コラボ企画はどのようなブランド課題を解決するのに適しているのでしょうか。

村上:IPコラボは、企業・ブランド認知の向上からターゲットの裾野拡大、ブランドイメージの変革、消費者との関係強化など幅広い課題解決に適しています。

企業やブランドを認知させたい場合は、既に知名のあるIPを活用することで一から育成していく必要がないことから効率がよいと言われていますよね。

そういった意味で、新しい顧客層にアプローチしたい場合やブランドの新しい側面を強調したい場合、特定のキャンペーンやイベントで話題を集めたい場合も有効だと思います。また、ブランドのイメージを変えたい場合には、敢えてそのブランドのイメージとは異なる方向のIPを提案することもあります。ただしIPのインパクトだけが残ってしまうことの無いように留意は必要です。

-デジタル施策を中心としたキャンペーンを話題化するためのコツは何ですか?

村上:まだまだ試行錯誤中なのですが、キャンペーンを話題化するためにはターゲットとなる消費者の興味や行動を深く理解しながら、彼らが共感し共有したくなるような“目玉”コンテンツを打ち出すことです。

そのうえで、SNSを活用したバイラルマーケティング、インフルエンサーやファンとの協働、インタラクティブなコンテンツやゲーム化要素の導入といった、参加を促しエンゲージメントを高める施策が重要だと思っています。

OOHを場所や期間を限定した体験機会としてだけでなくSNSでもコンテンツとして活用するのが定番化していますよね。いずれもリアルタイムで反応を収集分析し、柔軟にキャンペーンの調整を図ることが話題化に繋がるコツなのではないでしょうか。

IPコラボならではの顧客体験には、変化や気づきがあって面白い

-IPコラボは、どのような顧客体験を創出できるのでしょうか。

村上:体験価値が消費者個人の好みや価値観、環境などの条件によって変わってくる前提でお話しすると、IPが消費者に与える影響はさまざまだと思っています。日常の彩りであったり、癒しになったり、元気をくれたり、生きがいになったりとその関係性は人それぞれです。

このような性格を有するIPとコラボするからこそ広告には創造性が生まれ、クリエイティブの届き方や受けとめ方、ファンの方々の楽しみ方や評価にも変化が出て面白い。捉え方が多様だから、制作側が予想もしなかった広がりや盛り上がりに加え、驚くような気づきにも触れることができ、新しい体験創出に繋がるような実感があります。

いわずもがなIPに対する好意が、企業やブランド、商品に対する好意の醸成につながるのはIPコラボならではの優位性だと思います。その中で、企業のブランド、商品の価値とIPの価値、双方の創造において消費者への新たな体験価値を提供しながら、企業とIPがそれぞれ価値を向上していくことができると素晴らしいと思っています。

新しいことの実現に向けて、アートディレクターとしての強みを土台に

-これまでの実績を支える情熱や創造性のベースになっているものとは?

村上:IP関連業務に限らず、新しいことをやりたいと常に思っています。企画の打ち合わせで、他所が作った広告の資料を持ち出して、こんなのやりたい。と言う人がよくいるのですが、すごく嫌です(笑)。新しいワクワク感や感動を与えるのがエンタメの真骨頂ですので、常にそこを最優先に考えながら企画と向き合うようにしています。

また、どうしても実行したいアイデアについては自身でイラストを描いたりもします。アイデアをビジュアル化できることはアートディレクターとしてのひとつの強みとして、クライアントさんや版権元さんとアウトプットイメージをスピーディに共有する意味でもとても有効です。

子どもの頃から玩具やキャラクターグッズに囲まれて育った影響もあって、キャラものが全般的に好きです。それと性格的にどんな作品にも没頭でき感情移入も激しいほうです。IPコラボはオリジナルのセリフを考える作業も多いのですが、キャラクターを自分に憑依させることが得意なことから、時にはキャラクターのものまねでプレゼンをして提案の場を盛り上げることもあります。

さらに多くの課題と対峙するにあたって、立ち上がりから実行まで同じ熱量で協働してくれるスタッフの存在はとても大きいです。最適な解決に向けてはチーム一丸とならないと乗り越えられない試練もたくさんあるので、共に戦ってくれるチームスタッフにはいつも本当に感謝しています。

-最後に、今後に向けた意気込みをお聞かせください。

村上:IP関連、特にIPコラボ案件がかなり増えていて、今後さらに活発化すると思います。そうなるとまずはIP関連業務の経験と実績を持つクリエイターをもっと増やしたいですね。そのためには、広告業界でIP関連作品がもっと評価されるようになるといいな、とも思います。

これはACC TOKYO CREATIVITY AWARDSのブランデッド・コミュニケーション部門の審査員を3年やらせていただいた中で感じたことで、評価されやすい環境ができてショーケースが増えていけば、クライアント企業や版権元、さらに広告会社も含め皆で、まだ探り探りの「IP×広告クリエイティブ」への理解度を高めたりノウハウの共有もできて、さらに可能性が広がると思います。

日本が世界に誇るIP文化のさらなる発展を広告業界から盛り上げたい、そのお手伝いができたら、と微力ながら思っています。

あとは、IP作品の制作に深く携わってみたいというのもありますので、せっかくの社内の恵まれた環境や機能も活かしながら、近い将来チャレンジしていきたいです。


村上絵美 EXデザイン本部 第4EXクリエイティブ局 クリエイティブディレクター
2004年東京藝術大学デザイン科卒。同年ADKに新卒入社
アートディレクター出自のクリエイティブディレクター
主な業務は、食品・飲料・化粧品・ヘアケア・医薬品・ゲームなどの広告クリエイティブやパッケージデザインをはじめ、
IP関連では、玩具等ライセンシー商品の広告、企業・ブランドとのコラボ広告・キャンペーン、作品の宣伝プロモーションやイベントのクリエイティブ、グッズデザインなど。

読売広告大賞 優秀賞、ザ・デイリーヨミウリ広告賞 最優秀賞、ビジネス広告大賞 大賞
毎日広告デザイン賞 部門賞、日本産業広告賞 第1席他受賞多数。


<本件に関するお問い合わせ>
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
 EXデザイン本部 第4EXクリエイティブ局 村上 e-mail:emilke@adk.jp
株式会社ADKホールディングス
 経営企画本部 PR・マーケティンググループ 齋藤/内山 e-mail:mspr@adk.jp

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