コラム
高品位ホーロー製のシステムキッチンで「子供たちの未来を創る」サステナビリティストーリー
タカラスタンダード様と取り組んだ児童養護施設修繕支援プロジェクト
2025.03.06
近年、企業やブランドが「SDGs/サステナビリティ」といった観点において求められるのは、「何を言うか」だけでなく、「何をするか」という具体的なアクションです。自社サイトや広告でサステナビリティに関するメッセージを発信しても、実際の行動が伴わなければ、「ウォッシュ(見せかけの対応)」として見なされ、顧客の信頼を得ることはできません。
しかし、多くの企業がサステナブルな取り組みを進めたくても、自分たちがどういった社会課題に取り組むべきなのかがわからなかったり、社内リソースの制約や専門知識の不足により、思うようにソーシャルインパクトを生み出すことができないという課題を抱えています。
そこで注目されているのが、ソーシャルベンチャー企業やNPO法人との協業です。社会課題解決の専門家と連携することで、企業はより実効性の高いブランドアクションを実現できます。ADKマーケティング・ソリューションズ(以下、ADK MS) のBXデザイン局サステナビリティ・ソリューショングループは、こうした企業のサステナビリティ推進を支援するためにDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)領域において、その企業独自の「サステナビリティストーリー」を構築・デザインし、実行プランを策定。また、最適な協業先の選定やアプローチ戦略の立案を行い、ソーシャルベンチャー企業やNPO法人とのネットワーク構築も推進しています。
ADK MS、DE&I領域における共創アクションプランの開発支援サービス「DE&I ソーシャルアクション デザイニング」 を提供開始 (プレスリリース2025.3.6)
ADK MS BXデザイン局 サステナビリティ・ソリューショングループ 有泉
本コラムでは、「中期経営計画2026」の基本戦略として「ESGへの取り組み強化」を掲げる、タカラスタンダード株式会社様の、「高品位ホーロー※1」を活用して推進するSDGsへの貢献※2と弊社の支援について、担当するサステナビリティ・ソリューショングループのグループ長である有泉に話を聞きました。
※1 高品位ホーロー:汚れや湿気に強く耐久性が高いため、長く使えて廃棄物削減に貢献するサステナブルな素材。さらに、水洗いで清潔を保てるため水質汚染の防止にも寄与。省エネ・省資源を意識した製品展開を通じ、環境に優しく快適な暮らしを提供可能。
※2 タカラスタンダードのSDGsに関する取組み:https://www.takara-standard.co.jp/company/csr/
タカラスタンダードのESGへの挑戦:子どもたちの未来を創る取り組み
有泉:タカラスタンダード様は、2021年に策定した当時の中期経営計画の基本戦略の一つに「ESGへの取り組み強化」を初めて掲げ、社会や環境問題への取り組みを促進することで、「すべての人の暮らしを、より心地よくする」という経営理念の実現を目指すことを発表されました。その具体的な取り組みを検討するにあたって、約2年前にADK MSにご相談いただき、それ以来、様々な提案や支援を行ってきました。
タカラスタンダード様らしい取り組みを検討するにあたって、弊社はDE&Iを重要な取り組みテーマのひとつとして考え、直近は「子どもたちの未来を創る」ことを主眼に置いた具体的な施策をご提案・支援しています。
少子化が進むと住宅需要が低下し、市場全体が縮小するリスクがあります。タカラスタンダード様が中長期的に成長し、豊かさを届け続けるためにも、未来を担う子どもたちが幸せで、希望を持てる社会づくりが不可欠です。こうした課題に対応するため、「子どもの未来を創る」活動として、こども食堂の支援やキャリア教育教材への協賛、そして水回りの製品を通した暮らしの質の向上などを通して子どもたちが毎日を笑顔で過ごし、自分の未来にワクワクできる環境づくりに取り組んでいます。
児童養護施設の施設改修プログラムで実施した、キッチンリフォーム工事
編集部:どのようなパートナーと社会課題解決に向け協業したのでしょうか?
有泉:この「子どもの未来を創る」活動の新たな取り組みとして、ADK MSより認定NPO法人「ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン(以下、ハビタット・ジャパン)」による児童養護施設※3の「施設修繕支援※4」プログラムとの協働をご提案させていただきました。
日本は豊かな国でありながら、貧困や虐待といった社会問題が依然として存在し、子供や女性、障害者などの社会的弱者が支援施設を頼らざるを得ない状況です。しかし、児童養護施設の運営資金は主に公費で賄われ、衣食住や学費、人件費が優先されるため、建物の補修や設備維持に十分な予算が確保できません。さらに、職員は支援業務に追われ、施設の維持管理に手が回らないのが現状です。こうした状況を改善し、子どもたちがより安心して生活できる環境を整えるために、ハビタット・ジャパンでは児童養護施設を支援する施設改修プログラムを実施しています。
この施設改修プログラムの活動が、タカラスタンダード様の「子どもの未来を創る」取り組みと合致していると考え、神奈川県中郡大磯町にある児童養護施設「エリザベス・サンダース・ホーム」の男子寮「太陽寮」のキッチンリフォーム工事の支援を実施することになりました。
この施設には9つの寮があり、2歳から18歳までの子どもたちが暮らしています。今回のリフォームでは、タカラスタンダード様独自の「高品位ホーロー」技術を活かしたシステムキッチンを提供・施工。耐火性・耐久性・清掃性に優れたホーロー素材を採用し、対面型のデザインにすることで、子どもたちが自然に集まり、会話や食事を楽しめる空間になるように設計していただきました。キッチンの国内トップシェアを誇るタカラスタンダード様だからこその支援内容だったと思います。
※3 児童養護施設:保護者のいない児童、虐待されている児童など、環境上養育を要する児童を入所・養育。あわせて施設を退所した者に対する相談や自立の援助を行うことを目的とした施設。全国約600施設 在所児童約30,000人。全国児童養護施設協議会 https://www.zenyokyo.gr.jp/
※4ハビタット・ジャパンの施設修繕支援活動: https://habitatjp.org/our-work/repair
施設の子供や職員の方々へ、ついに初披露!
編集部: 1月中旬にキッチンの寄贈式が行われたそうですが、当日の様子を教えてください。
有泉: システムキッチンの寄贈式・お披露目会の当日、タカラスタンダード様の社員の方々と共に我々も「エリザベス・サンダース・ホーム」の施設を訪れ、子どもたちの生活環境を見学するとともに、エリザベス・サンダース・ホームの創設者である澤田美喜さんについて学ぶ貴重な機会をいただきました。そして、同施設の環境整備の一環として、敷地内の清掃を行うボランティア活動も同日に実施しました。
編集部: リフォーム後の寮の様子はいかがでしたか?
有泉:今回キッチンが設置された太陽寮は、施設内でも最も古い建物で、老朽化が進んでいたため、安全面や衛生面での課題がありました。しかし、設備が一新され、使いやすくなったことで、空間全体の雰囲気や空気感も大きく変わりました。さらに、ハビタットさん主導で行われた壁や床の改修も相まって、より快適な環境が整いました。これからは、子どもたちがキッチンでご飯を温めたり、楽しく食事をしたりする光景が広がっていくのだと思うと、とても嬉しく感じます。写真左)エリザベス・サンダース・ホーム理事長 行武広巳様(左)、 タカラスタンダード 営業本部 コミュニケーション推進部 部長 植村真様(右)
編集部: 当日は、子どもたちや職員の方々にとっても初めての披露だったそうですね。皆さんの反応はいかがでしたか?
有泉: はい、ちょうど子どもたちが学校から帰ってきたタイミングだったので、直接その反応を見ることができました。自分たちが実際に生活する場所ということもあり、実感が湧いたのか、とても喜んでくれていました。最後には、みんな揃って大きな声でお礼を言ってくれたのが印象的でした。職員の方々も、キッチンの細かな仕様や耐久性に感動され、特に対面式のレイアウトになったことで、子どもたちの様子を見渡せる点を喜んでくださいました。
寄贈式では、施設長から「この施設に来る子どもたちにとって、安心できる生活環境を整えることがいかに大切か」というお話を伺いました。そして、国や県からの補助金が限られる中で、タカラスタンダード様が設備面を支援してくださることで、施設としてはその分の資源を子どもたちのために還元できるとのことでした。
虐待や貧困といった厳しい環境から来る子どもたちは、私たちにとって当たり前のことを知らない場合が多く、施設に入ること自体に不安を抱えています。そんな彼らにとって、まずは生活環境を整え、マイナスの状態をゼロにリセットすることが重要だとも伺いました。今回のキッチンリフォームは、その第一歩として非常に意義のある取り組みになったと感じています。
タカラスタンダード 営業本部 コミュニケーション推進部 ブランドデザイングループ長 野口純様 コメント
写真左)タカラスタンダード株式会社 営業本部 コミュニケーション推進部 部長 植村真様(右)、ブランドデザイングループ長 野口純様(左)
写真右)今回提供したキッチンの前でハビタットのフラッグを持つタカラスタンダード株式会社の皆様
我々は「すべての人の暮らしを、より心地よくする」という経営理念のもと、これからの未来を担う子どもたちの健やかな成長を支えるとともに、キッチンやお風呂での幸せな記憶を育むために、企業として何ができるかを常に検討していました。そんな中、児童養護施設で我々の商品を設置することで、子どもたちの生活環境を整えるという機会をADK MSの有泉さんが提案してくださり、ハビタット・ジャパンさんと実施することができ、生活者の水回りを支える企業として非常に意義のある活動になりました。今回設置したキッチンは、高品位ホーローが使用されており非常に丈夫な製品なので、これから長く沢山使っていただきたいです。
「ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン」と協働で児童養護施設のキッチンリフォームを支援 (2025.1.29プレスリリース)
タカラスタンダードのDE&I活動:障害者アートとのコラボによる取り組みも
編集部:タカラスタンダード様が取り組むその他のDE&I活動におけるADK MSの支援についても教えてください。
有泉:タカラスタンダード様では、さまざまなバックグラウンドを持つお客様に寄り添うための施策を推進されています。2024年4月から民間企業にも義務化された障害者差別解消法の「合理的配慮の提供」に対応するため、全国約160カ所のショールームで接客体制を強化されました※5。そして、このショールームで、DE&Iに対する意識向上の一環として、ADK MSが障害者アート団体とのコラボレーションを提案しました。
「エイブルアート・カンパニー」「一般社団法人障がい者自立推進機構」「一般社団法人障がい者アート協会」の3団体と連携し、3人の登録アーティストの個性豊かな作品をデザインに採用し、缶マグネット、水切りクロス、鍋つかみなどのキッチンで日常的に使用できるオリジナルノベルティグッズ(非売品)※6を制作。障害者アートを取り扱う3つのNPO団体と同時にタイアップした企業はタカラスタンダード様が初めてでした。一部のショールームで来場者へのプレゼントを実施していますので、ぜひお立ち寄りください。
障がいのあるアーティストの作品がデザインされたオリジナルノベルティをプレゼント (2024.1.26プレスリリース)
ADK MSではこれまで培ってきた広告事業からの拡大領域の一つとして、クライアントの課題の分析から、その解決策の提案・遂行まで行う、実行型のコンサルティングに注力しています。サステナビリティ領域においても、今回のタカラスタンダード様の取り組みのように、そのクライアントならではのソーシャルアクションの実行や、クライアントの成長のための事業・組織・プロセス等も含めて「デザイン」するという意味でのクリエイティビティを掛け合わせることで、「クライアントのビジネス課題」と「社会課題」を同時に解決することを目指しています。
今後も、ADK MSサステナビリティ・ソリューショングループでは企業の持続可能な成長を支援し、社会課題の解決につながる実効性の高いアクションを共に創出していきます。
※5 約800名のショールームアドバイザーが、株式会社ミライロ主催の「ユニバーサルマナー検定3級」を受講。住宅設備機器業界では初の全国規模での導入となり、すべてのお客様が安心してショールームを利用できる環境づくりを進められています。
※6配布対象ショールームについては一部となり、ノベルティがなくなり次第終了
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有泉 昌 ADKマーケティング・ソリューションズ EXデザイン本部 BXデザイン局 サステナビリティ・ソリューショングループ プランニング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター 外資系企業のアカウントディレクション&プランニング業務に従事後、統合型クリエイティブプランニング部署へ。 CMやグラフィック等のマス広告開発だけでなく、プロモーションやデジタルなどアクティベーション活動の企画/実行まで、領域や手法に捉われないニュートラルな視点でのプランニングを実施。様々な企業のサステナビリティ関連活動の企画案件にも携わってきた実績をもつ。 |
<タカラスタンダード株式会社 会社概要>
1912 年創業。「水まわりって、大切だから」をブランドメッセージに、独自の「高品位ホーロー」技術を活かしたシステムキッチン・バスを中心とした住宅設備機器を製造販売。より高度化、多様化、複合化するお客さまのニーズにお応えするホーロー技術のリーディングカンパニーとして、また住宅設備機器のトップメーカーとして、次世代を担う新たなホーローの可能性を追求し、快適な暮らしの創造を目指しています。
[設立:1912 年 5 月 30 日(創業 112 年) / 売上高:2,347 億円(2023 年度)/ 従業員数:6,616 名(2024 年 3 月末時点)]
https://www.takara-standard.co.jp/
<ハビタット・ジャパン 概要>
「誰もがきちんとした場所で暮らせる世界」の実現を目指し、世界70カ国以上で住まいの問題に取り組む国際NGO「ハビタット・フォー・ヒューマニティ」の日本法人。アジア各国のハビタット・オフィスと連携し、ファンドレイズとボランティア派遣を通じて、海外における住居建築をサポートしています。国内では、高齢者や障がい者、ひとり親家庭や生活困窮世帯が抱える住まいの問題に取り組むほか、生活の場に代わる福祉施設の修繕を通じて、最も弱い立場にある人々がきちんとした場所で暮らせるよう取り組んでいます。https://habitatjp.org/
【施設改修プログラムについて】
「施設改修プログラム」はハビタット・ジャパンの地域プログラムの一つで、児童養護施設や母子生活支援施設、その他のコミュニティ施設を改修することで、子供をはじめとする社会的弱者に適切な生活環境を提供することを目的としています。
ハビタットのサイト内のタカラスタンダードの取り組みに関する記事
<株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ 会社概要>
マーケティング領域全般における統合的なソリューションをフルファネルで提供。2021年に始動した事業ブランド「ADK CONNECT」がフラッグシップとなり牽引するデジタル&データドリブン・マーケティング領域では、専門性の高いスペシャリストが組織横断で集結し、クライアントのビジネス成果に貢献する「価値ある顧客体験」をご提案します。 ADK MSウェブサイト https://www.adkms.jp/
【サステナビリティ・ソリューショングループについて】
EXデザイン本部 BXデザイン局の組織で、コンサルティング・プランニングから、クリエイティブ・アクティベーション開発まで、クライアントのサステナビリティ領域の業務推進を支援。「クライアントのビジネス課題」と「社会課題」を同時に解決していくことを目指しています。
【本件に関する問合せ先】
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
EXデザイン本部 BXコンサルティング局 サステナビリティ・ソリューショングループ 有泉 昌/e-mail: Sus_Sol_prj@adk.jp
株式会社ADKホールディングス
経営企画本部 PR・マーケティンググループ 伊藤/内山 e-mail:mspr@adk.jp