コラム

サンリオの顧客マーケティングの実践 ―広告会社(ADK)との新しい共創のカタチ

宣伝会議サミット2024(夏)イベントレポート

昨今のマーケティングは、データ分析によるファクト抽出、数的根拠に基づく戦略構築や実行後の検証など、やるべきことが多岐に渡ります。これらのようなハードルを抱えるクライアント企業に対し、当社がどのような支援を行っているか実践的な視点でお伝えするべく、今回、「宣伝会議サミット2024(夏)」において、当社が事業支援を行うサンリオ様と、外部パートナーとしての広告会社の価値を、事例を交えて議論するサンリオの顧客マーケティングの実践 -広告会社(ADK)との新しい共創のカタチと題したセッションを行いました。


スピーカーには、株式会社サンリオ 常務執行役員 柴田貞規様(以下、柴田氏)をお招きし、日頃よりサンリオ様へプランニング責任者として向き合う、当社マーケティングインテリジェンス本部 末本典子が登壇しました。

サンリオのファンベースマーケティングの3つの課題 

柴田氏:
サンリオのビジネスは“購入したら終わり”ではありません。そのため、サンリオのグッズを持つ人はどんな人か、日々の生活にサンリオがどう関わっているかの深掘りを行っていました。しかし、あらゆる世代のサンリオファンの方々には複雑で多様なパターンがあり、簡単には整理しきれませんでした。ファンや生活者理解をさらに深めることを自社だけで行う難しさを感じていました。
また、サンリオの事業は、ライセンスビジネスと物販、そしてデジタル関連が数多くあり、様々なメンバーが関わっています。そのため、事業部が確立されている反面、部門横断プロジェクトを立ち上げる難しさや、立ち上げ後のプロジェクトマネジメントにも課題を感じていました。
そこで、これら3つの課題※1の解決に向けて、ADK MSと仕事をしています。
※1  3つの課題
(1)生活者がなぜサンリオに接してくれているのかの理解の深掘り
(2)複数部門を横断してプロジェクトを動かすこと
(3)プロジェクトそのもののマネジメント

1:豊富なデータを活用した、生活者理解の深掘り

柴田氏:
ファンの方々の多様な行動パターンの中で、どのタイミングでファンになっていただけるのか?商品の購入に至るかが特定しきれず、(カスタマー)ジャーニーの構築が思うように進みませんでした。過去のデータをみたり、行動観察を行いましたが、自社が持つデータだけでは限界を感じ、IPビジネスを長く手がけるADK MSに声をかけたのが、現在のパートナー関係のきっかけでした。ADK MSが持つデータやその使い方、特にファン視点からのデータ分析に期待をしました。

末本:
当社は長くIPビジネスを強みにしてきました。サンリオへは、生活者向けのコミュニケーションだけでなく、事業全体に対する視点も含めてやり取りをしています。当社は今、データドリブンでの意思決定の支援に注力しており、クライアント企業が事業を立ち上げてマネタイズするまでに起こりうる問いに対応するデータアセットを構築しています。御社とは、特別な定量調査を行う前段階から、「こういう視点で見るとよいのではないか」という問いの部分から議論をしています。

柴田氏:
ADK MSがもともとお持ちの多種多様なデータのおかげで、仮説の議論とその探索が行いやすくなりました。自社でやろうとすると、仮説を立てる段階で、その後の調査や費用のことなどを考えてしまいます。 データアセットを持つ会社とお付き合いするメリットは、仮説の出し方にバリエーションが生まれることや、仮説検証も共同で実施してもらえる点にあると思います。
現在は、サンリオがこども向けのビジネスにどう取り組んでいくかというプロジェクトを一緒に進めています。
少子化でキッズ市場が縮小している今、左脳的に考えると新たに投資すべき市場ではありませんが、改めて市場参入すべきかを社内で確認すると、絶対にやるべきだと全員が答えました。その理由は「自分は過去にサンリオと触れていたから今この場にいる」ということでした。この状況を、ぜひ可視化・言語化したいということで、ADK MSに相談しました。

末本:
サンリオの皆さんの「〇〇時代にこういう経験をもっている」という肌感覚を、LTV(顧客生涯価値)への影響としてビジネス文脈で定量的に語るために、当社はデータを使って図のように解明し、その上で、キッズ市場に投資すべきかどうかを一緒に議論させていただきました。

柴田氏:
生活者を理解するための100%精緻なデータというものはないので、“できるだけ正確なもの”を活用すると合意したうえで進めています。自社だけではできない、リアルなビジネス(の判断)とデータ分析の間を埋める人たちのおかげで、決断する覚悟ができる。ADK MSには、データの正確さと、そのデータを思いきって使う勇気を精神的に支援してもらっています。

2:ワークショップで部門横断プロジェクトのゴールを策定

柴田氏:
社内で、「最近は保育園にサンリオのキャラクターがいない」という声を聞くことがありました。他の社員にもヒアリングすると「こどものイベントに行っても、他社のキャラクターばかりでキティちゃんは出てこない」等、こどものいる場所に自社サンリオキャラクターがいない状態を社員も感じていることが分かりました。
そこで、プロジェクトのKPIKGIといった数値目標の前に、自分たちの商品やキャラクターが、どういった場所でどのような状態になっていてほしいのかをゴールに設定するとよいのではと考えました。これをADK MSへ相談すると、ワークショップを提案いただき、実施することになりました。

末本:
ワークショップは二段階で行いました。第1ステップは、プロジェクトのキーとなる役員、リーダーの方へのヒアリングを。第2ステップでは、現場の方々も巻き込んで実施し、キッズプロジェクトが目指す“状態ゴール”を決めていきました。

柴田氏:
会議の中で「お客様にどうやったら買ってもらえるんだろう」という「お客様目線」での発言があり、それまでの「売上を上げるためにどうするか」という考え方から、視点が変わる瞬間がありました。改めてこのワークショップは、現場メンバーも前向きに捉えてくれましたし、社員の意見を聞くことの大事さに改めて気づくことができ、学びのあるとても良いものでした。ワークショップ実施後も、この“状態ゴール”の共有を何度も繰り返して行い、プロジェクトを進めていきました。

3:プロジェクトマネジメントにも共創が有効

柴田氏:
プロジェクトマネジメントのために注力しているのが、WBS(作業分解構造図)と会議体設定の徹底です。WBSを書けるということは、その仕事の進め方を全て理解できている。逆に書けないということは、理解するために誰かに聞かなければいけない状態。これが部門間の連携にも繋がります。
そしてもう一つが、書き上げたWBSを確認する会議体をどう作るかです。その会議体にもADK MSに入ってもらっています。外部のパートナーと共にプロジェクトマネジメントを行う良いところは、例えば、会議の中でWBSのチェックを上司が行うと場が凍ってしまうこともありますが、そうではなくて、ADK MSから進捗を聞いてもらえると、僕も第三者的立ち位置で会話に入れる。進捗管理は他社にやってもらうと、会議が殺伐とせず丸くなることが最近の気づきです。

最後に

広告会社は、広告メディアを発注しないと動いてくれないと思っていらっしゃる方も多いかと思いますが、そうではありません。宣伝部門からでないと依頼できないということもありませんでした。プロジェクトの進捗管理も含めて自分たちと並走してくれます。広告会社の役割も変わってきていて、小さなプロジェクトでもやりきってくれるなと感じます。ぜひADK MSのような広告会社と、上手な共創の方法があることが伝わればと思います。
柴田氏は以上のように締めくくり、セッションが終了しました。

【登壇者】

株式会社サンリオ ブランド管理本部 常務執行役員
データ・ファンベースマーケティング担当
柴田貞規 様

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
マーケティングインテリジェンス本部 データソリューション局 局長 
末本典子

モデレーター
株式会社ADKホールディングス
経営企画本部 PR・マーケティンググループ グループ長
後藤尚平


【本件に関する問合せ先】
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
  マーケティングインテリジェンス本部 末本
株式会社ADKホールディングス
  経営企画本部 PR・マーケティンググループ  e-mailmspr@adk.jp


ADK Marketing Solutions Inc.