コラム
B2Bダイナミズムの鍵:リクルートに効くB2Bコミュニケーション最前線!
【セミナーレポート公開】宣伝会議サミット2024(夏)顧客理解セミナーレポート
2024.07.09
6月27日に開催された宣伝会議サミット(夏)オンラインでは、「B2Bダイナミズムの鍵:リクルートに効くB2Bコミュニケーション最前線!」と題して、弊社のマーケティング・インテリジェンス本部に所属するプランニングディレクター・木村加奈が最新のB2B企業向けコミュニケーション戦略について話しました。
近年、B2B企業のコミュニケーション活動は急速に拡大しており、弊社でも2020年と比較して取引額が160%拡大しています。これまで、B2C企業と比較すると認知が限定的だったB2B企業が、社会全体に対して積極的な存在価値を示す時代となり、それに適応したコミュニケーション戦略が求められています。弊社でも特にリクルートに関連したお問い合わせが増加しており、就職ランキングの向上、学生へのブランド強化、戦略的な人材獲得などに関する課題が多く寄せられています。本セミナーでは、これらの課題に対する最新のソリューションや事例を交えてご紹介しました。
1)B2Bダイナミズムの全体像
上場企業だけでも2000社近く存在するB2B企業は、規模や業種の違いにより多様な課題が存在しており、コミュニケーションのターゲットも細分化されています。弊社では、B2Bの専門知識・人材を集結させた「B2B_Challenge」を通じて、情報共有とアップデートを行っています。
この取り組みで見えてきたのが、企業のビジネス活動を中心に、ビジネスの活性に影響をもたらす「社会」や「自社」の視点も含めた全方位でのビジネス支援スコープです。具体的には、顧客の獲得や育成を支援する「増幅力」、社会全体や市場でのプレゼンスを強化する「存在力」、自社パーソンの魅力とロイヤルティを高める「求心力」の3つのキーワードに集約されます。これらのキーワードを基に、さらに9つの具体的なソリューションメニュー※1を提供しています。そのソリューションメニューの1つが、リクルーティングです。
ADKは顧客を創り、育成し、拡大するフルファネル型の顧客体験創造を重視し、クライアントと共にブランドの成長と発展を促進していますが、このアプローチは、リクルーティングソリューションに関しても適用可能です。効果の高いリクルーティングコミュニケーションを実現するには、インターナルや企業ブランディングなど、その企業を取り巻くソリューションとの連携が重要です。具体的には、インターナル施策を通じて従業員やステークホルダーから期待と信頼を得ることが、外部のブランディング活動に貢献しますし、そうして企業価値が高まることで、最終的にリクルーティングの対象となる良質な情報を潜在層に提供する有機的なサイクルが実現します。
2) リクルートのリアルに迫る
最近のリクルート環境の実態
一般的な就活ファネルは企業を認知し興味を持ち、能動的に調べることで理解し、自分が将来働く環境としてその企業が魅力的か判断します。その後エントリーし選考過程を経て内定を獲得し承諾することで、就職活動は終了します。
しかし、このファネルはもちろんストレートに移行することはありません。企業側は優秀な学生を選考し入社してもらいたいと考えますが、学生の選択肢に入らない、選考過程で離脱される、入社後に早期離職されることもあります。学生側も当初の希望通りの企業から内定をもらえるケースは少ないのが現実です。そこで、リクルート環境を調査し、特に以下の三つのキーワードに注目をしました。
①インターンシップの増加やオンライン・ハイブリッド採用活動の普及による、就職活動の「早期・長期化と複雑化」
② ①に伴う、生産性と効率を重視した「タイムパフォーマンス(タイパ)の追及」
③学生のキャリア形成との一致が重視された「キャリア適正マッチング」
①‐③のような環境下では、就活の過程にはいくつかの「揺らぎポイント」があります。その揺らぎポイントを理解した上でソリューション開発をすることが重要です。例えば、最後に内定を承諾するタイミングです。このような重大な決断をするタイミングは、特に不安が募り感情の揺らぎが発生しやすいポイントです。就活生が各選択肢について確信を持てるように、企業が適切な情報やサポートを提供することが重要になってきます。
B2B企業のリクルーティング課題
この就活ジャーニーの中で、B2B企業が直面する主要な課題は、間口と歩留まりに集約されます。間口の課題では、少子化により学生数が減少しているため、エントリーの選択肢に入るために企業の社名認知やイメージの明確化が求められます。歩留まりの課題では、売り手市場において学生の関心を引き、ニーズのミスマッチを防ぐことが重要です。これらの課題ごとに、その原因となるボトルネックを見つけ、就活生への正しい接点&ルートづくりと、就活生へのニーズマッチしたコンテンツを用意する必要があります。
そして、この正しい接点とルート設計のためには、就活ジャーニーの流れに沿ってPOE※2メディアの各タッチポイントを組み合わせた「就活POEマップ」を活用します。大手就活サイトを中心に置きPOEメディアを有機的に組み合わせ、先述の「揺らぎポイント」を捉えた正確で魅力的な情報を提供し、学生の意思決定を支援し企業との相互理解を促進することが求められます。
就活POEマップとニーズに合ったクリエイティブ・コンテンツ戦略
就活POEマップには主に2つのパターンがあります。
・パターンA:認知度や影響力がある大企業が採用するマス型集約アプローチ。ペイドメディアを中心に広告を展開し、多くの学生にリーチした後、オウンドメディアで情報を集約する流れを重視。
・パターンB:規模や影響力が小さな企業が採用するフォーカス型拡散アプローチ。オウンドメディアから発信するコンテンツによって話題を引き起こし、アーンドメディアを通じて情報を拡散させる広がりを重視。
企業は、自社の認知度、イメージ、社会的評判、採用ニーズや専門性、競合との比較を総合的に判断し、どちらの戦略を採用するか検討する必要があります。
いずれのパターンの場合も、企業が就活生に魅力を伝えるためには、彼らのニーズや特性に合ったコンテンツを提供する必要があります。自社のパーパスやビジョン、社会的な取り組みに対する真摯な姿勢、個人の成長や適応可能性をどれだけ示せるかが重要です。現代の就活生は情報にアクセスしやすく、装飾された情報には警戒心を持っている傾向があるため、誠実さと透明性を重視したアプローチが求められます。
3)ADKグループのリクルートコミュニケーション
ADKグループのリクルーティング課題は大きく3つ挙げられます。
- 採用の早期化・長期化に伴い、就活生とのコミュニケーション量・質の向上が求められている。
- 業界内での規模と知名度がトップ企業に及ばないため、ステータス以外の選択肢としての魅力を高める必要がある。
- ソリューションビジネスにおける理系人材の獲得。
これらの課題に対処するために、ADKでは2016年からリクルートコミュニケーションに重点を置き始め、「相棒採用」と呼ばれる独自の採用システムを開発しました。学生が働きたいと感じる社員を指名し、指名した社員による選考を受けることができるという、リクルートの広報活動と選考フローが一貫した画期的な取り組みとして、業界内外で話題になりました。
最近では、「ポテンシャル採用」という取り組みを通じて、専門性人材の獲得強化に注力しており、就活POEマップを活用したプランニングにより、各ファネルで適切な接点&ルート上で、学生との関係構築を重視したよりリアルでパーソナルなコンテンツ開発にチャレンジしています。このようにADKに興味をもってくれた就活生の関与度・ロイヤリティを高めることで、ミスマッチの少ないリクルートコミュニケーションを実現しています。これらの取り組みを通して、入社前後のギャップをなくしたことで、推薦辞退率や内定率が改善し、就活生からの評価も高まりました。
最後に
リクルートコミュニケーションを成功に導くためには、人事部門だけでなく広報・宣伝、事業部門など全ての部門の連携が必須要件となります。そうすることで就活生に対してリアリティのある期待感を醸成し、ミスリードのないコミュニケーションを提供することが可能になります。つまり、企業にとってリクルートコミュニケーションを強化することは、企業全体の活性化に貢献し、B2Bダイナミズムの鍵となると断言することができるのではないでしょうか。
以上の取り組みを通じて日々知見と実績を更新しながら、今後もクライアント企業の重要なリクルートコミュニケーションを支援し続けることを宣言し、本セミナーを締めくくりました。
※1ブランドコンサルテーション、グローバルマーケティング、コーポレートPR、ソーシャルサステナビリティ、認知・集客支援、顧客育成支援、営業支援、インターナル、リクルーティング
※2POE:ペイド(Paid)、オウンド(Owned)、そしてアーンド(Earned )の3つの総称
本件に関する問合せ先
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
マーケティング・インテリジェンス本部 第3プランニング局 プランニングディレクター 木村
株式会社ADKホールディングス
経営企画本部 PR・マーケティンググループ 根岸/伊藤 e-mail:mspr@adk.jp