コラム

市川晴華さん(CHOCOLATE Inc.)インタビュー【後篇】

あなたとちいさな話がしたいんです 略して…ちい話!

大事なことって、ちいさなことに詰まっている(気がする)。広告されない ちいさなモノゴトマガジンちい告編集部がゲストをお招きし、ちいさくて大事な大事な話を伺っていこう!そして、ちい告の肥やしにしていこう!というインタビュー企画です。


今回のゲストはこの方!

市川晴華さん

1990年生まれ。CHOCOLATEにプランナー/クリエイティブディレクターとして所属。(読売広告社にもパートナースタッフとして所属)サントリーペプシ「本田とじゃんけん」「クールポコ」、イエローハット/ピザハット/リンガーハット「ハット首脳会談」、アロンアルフア「時間が余るCM」「ウルフアロン」、アース製薬「片手でモンダミン」、日の出屋製菓産業「しろえび紀行がとまらない」など。

🎧ゲストのお人柄が、より伝わる音声ver.も公開中!

🐱インタビューの前篇は、こちらから!

世の中で愛されているのは、広告よりも、やっぱり商品。

編集部:市川さんの企画は、市川さんらしい世界観やオリジナリティを感じるものばかりです。表現の部分と広告としての機能の部分。その両立は、どういった意識で考えられていますか?

市川さん:よく「笑えるものが好きなんですか?」と聞かれるのですが、笑える企画を作ろうと思ってやると、商品から離れちゃうんですよね…。なので、まずは商品を絶対に真ん中に置こうというのは決めています。当たり前のことなんですけど、面白い企画が先にあって商品を乗せるのではなく、商品を真ん中に置いて、それをどう面白がるかという順番。前篇でのオリエンシートの話もそうなのですが、商品を最初に見た時に、ちょっと感動する部分だったり、「この商品めちゃくちゃ不思議」だなと思った部分を中心に企画を考えることが多いです。
例えば、アロンアルフアという商品を長く担当させてもらっているのですが、5秒でくっつくんですよ。瞬間接着剤なので、クライアントさん的には当たり前と思われていたのですが、「5秒ってすごくない?」と驚いてしまって。その商品スペックを中心に企画したのが、「時間が余るCM」という15CMです。5秒でくっついて、残りの10秒間どうでもいいことをするというCMなのですが、この企画も、商品スペックが真ん中。ふざけているようでいて、商品訴求が成立しているという状態が、自分の型のひとつになっている気がします。
アロンアルフア「時間が余るCM」。冒頭の5秒で靴が直ったので、残りの10秒は社長のモザイクアートの時間となる。

編集部:たしかに世の中的には、広告以上に商品自体が愛されている確率の方が高いですよね。

市川さん:本当にそうだと思います。広告制作者の皆さんも、商品名でエゴサをしたりすると思うのですが、ほとんどが商品についてのつぶやきなんですよね。世の中の人にとっての接点は、やっぱり商品。だからこそ広告は、絶対に商品起点にしたほうがいいなと思っています。

心をくすぐる「無自覚」なモノたち

編集部:今度は、お仕事以外のお話で。市川さんの心をくすぐるものって、どんなものでしょうか?普段の生活で、クスッやキュン!とくるものを教えてください。

市川さん:私、トムとジェリーみたいな一回調子に乗るキャラクターが好きですね。イメージとしては、仲良く2人で喋っていて、気づいたら崖にいて、そのまましばらく空中を歩いて海に落ちるみたいな描写がすごい好きです笑 周りを見ていなくて、本人だけがハッピーなお調子者。そういう存在が愛しいなと思います。

イメージ図。

 あと、ディズニーの牡蠣のキャラクター「ヤングオイスター」。大きなセイウチみたいなやつが、彼らを食事会に招待するシーンがあるんですよ。牡蠣たちは、食事会だからと、ちゃんとエプロンをして、ちっちゃなナイフで食事を待っているんですけど、結局食べられてしまう。悲しい結末が待っているのに、食事を楽しみにしている姿が、かわいいんです。すみません、すごい細かくて笑

 編集部:まさに、そういう細かい話を聞きたかったので、ありがとうございます!

市川さん:「無自覚であること」が好きなのかも。これも、本人たちは食べられるとは思っていなくて、ただ食事を楽しみにしている。犬とか猫がかわいいのも、無自覚だからだと思うんですよ。そこに作為的なものがない。戦略とかがなくて、ありのままみたいな「無自覚さ」にキュンとします。
笑わせようとしていない、真剣に何かをしている人のことが、好きなのかもしれません。

編集部:市川さんの商品真ん中という企画のスタイルとも近いですよね。商品自体は、本当は面白いはずがないのに、そこから面白さを見出しているという。

市川さん:そうかもしれません!通底しているかも。

まさかのドラマ化!?ふくらむ『ちい告』ドリーム

編集部:よろしければ、ちい告の好きなところを教えていただけるとうれしいです!

市川さん:これまで拾い上げられていなかったすごく小さな視点だけど、実は誰もが一度は思ったことのあるデカい共感。それが言葉になっているというのが、すごい大発明だなと思っています!ただでは終わらせないという感じが全ページに出ていて、すごくこだわりを感じますね。最近、癖(へき)という言葉があると思うのですが、誰かのすごく研ぎ澄まされた癖が詰まっている。このニッチな世界観は、唯一無二だと思います。
テーマが複数あって、バラバラしているとも言えるんですけど、その1個1個がすごく深いから、なんか繋がっているように思えるんですよね。エッセイにも近いと思いますし、ドラマにもできると思います。例えば、バッグの中身のやつ。マミ?マミのバッグの中身?

編集部:あ!「真実のバックの中身」ですね!たしかにマミとも読めます笑

市川さん:失礼しました笑 『(真実の)バッグの中身』(ちい告第5)のやつは、ドラマ化できそう。バッグの中身を見るだけで、持ち主の人柄がわかるじゃないですか。レシートとか、払っていない光熱費の紙が入っていたり。永遠に人間像が浮かびます。
例えばですが、最初にバッグの中身を出して、その人の1日を描くみたいなドラマ。マミは、こんなバッグの中身なのに、実はこういう生活をしているとか。実は、このバッグの中身になる必然性があったみたいな話になっていくとか。

編集部:ドラマ化!すごくいいヒントいただいた気がします。

市川さん:結局、人は小さなところに、好きだと思える要素が詰まっていると思うので。ちい告の一個一個の切り口は、なんというか…宝物です!ちい告はアナログにこだわっているというのは、すごく理解しているのですが、今後より多くの人に見てもらう発展を遂げていくのでしょうか?

編集部:まさに、新しい展開も試行錯誤したいと思っている最中です。もちろん紙でやっていくというのは、私たちのこだわりではあるのですが、いろいろと考えているところで。今回のインタビュー企画は、ネタ集めという目的もあるんです。なので、市川さんのお話がすごくありがたいです!

 市川さん:応援しています!

編集部:ありがとうございます!涙
最後に一言、今日の感想があればお願いします。

市川さん:小さい話って無限に広がっていくなと思いました。
雑談の端っこみたいな話が、どんどん枝分かれして、さらに小さな話になっていく。私は、ミクロな話をするのが好きなので、めちゃくちゃ楽しかったですし、次回も楽しみです!

編集部:次回にも繋いでいただいて…本当に、第一回目のゲストが市川さんで良かったです!ありがとうございました!

イラスト:深川優

『ちい告』とは。
広告されない、ちいさなモノゴトマガジン『ちい告』。時が経てば忘れてしまう「クスッ。」や「キュン!」を手のひらサイズにギュギュッとつめこんだフリーペーパーです。(ADKグループから不定期発行。次号も準備中です!)

【共同編集長】片岡良子(CHERRY)・川瀬真由(ADKマーケティング・ソリューションズ) 
【デザイン】大橋謙譲 (CHERRY)

バナーイラスト:コマツタスク

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