コラム

三井不動産の好感度向上に向けた構造化までの2ステップと三井不動産PESO MARKETING MODELプロジェクトの肝とは。宣伝会議セミナーレポート。

事業パートナーだから出来る、PESO×ファングロース戦略

データはあるけれど、情報接点の横断評価と施策を最適化するにはどうしたらよいのか。
ADKマーケティング・ソリューションズ(以下「ADK MS」)では、広報戦略において「企業好感度」という指標を定めている三井不動産様に対し、好感度を形成するうえで何がどう効いていて、どの程度影響しているのかを、PESOモデルを用いたデータマーケティング支援を行っています。

9月27日に開催されたアドタイデイズ2024(秋)東京では、三井不動産広報部の伊藤 諭 様と共にPaid Mediaだけでなく、あらゆる情報接点(Earned/Shared/Owned)全体を要因分解することで、全体のPDCA運用に進化させる事例についてご紹介しました。

多くのお申込みを頂き増席となるほどの大好評だった本セミナーのレポートを公開します。

【登壇者】

三井不動産株式会社 広報部 ブランド・マネジメントグループ 総括
(現在は三井不動産株式会社 日比谷街づくり推進部 事業グループ 統括)
伊藤 諭 様

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ マーケティングインテリジェンス本部
データマーケティングプロデュース局 局長

窪田 亮一

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ 統合チャネル戦略本部
第1チャネルマネジメント局 グループ長 

中村 航一郎

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ 第4ビジネスプロデュース本部
本部長代理 

吉川 友英

「支援」と「貢献」の関係。ゴールは「企業好感度の向上」

三井不動産、ADK MSの両社が目指しているゴールは「企業好感度を高める」こと。
それが三井不動産のKGIにもなっていますが、ただ好感度を高めるだけではなく、どうやって高めるのかといった好感度への影響因子を可視化して戦術に落としていくことを目指してしています。


三井不動産 伊藤 諭 様(以下、伊藤):三井不動産は、ホテル・リゾート、商業施設、オフィス、住宅、ロジスティクスといった三井不動産グループの各事業において、それぞれ個別の目標とターゲットが無数に存在します。各事業の好感度が上がることは、三井不動産グループ全体の好感度の向上にも繋がります。とはいえ、各事業の目標はそれぞれ異なるため、効果的にポジティブな影響を各所に及ぼすには、三井不動産自体の好感度を上げることが非常に重要であり、それが我々広報部のミッションとなっています。

ADK MS 中村 航一郎(以下、中村):そのミッションを受けて、三井不動産の好感度が幅広く、シャワーのように各事業にポジティブな影響を及ぼす効果をもたらすための施策を行っています。
事実、好感度が各事業ブランドにポジティブな影響を及ぼしていることはデータとして確認できています。
例えば、「ららぽーと」に対する好感度は、「ららぽーと」が、三井不動産の運営であることを知っている人は、三井不動産の運営であることを知らなかった人たちよりも高いことが分かっています。また、「ららぽーと」が三井不動産の運営であることを知っている人は、同様に三井不動産自体に対する好感度も高いというデータも出ています。
したがって、先ほど申し上げたように、シャワー効果がデータでもしっかりと現れていることが確認できるのです。


中村:三井不動産のブランドは、親ブランドの傘下に事業ブランドが整理されている構造になっています。三井不動産という傘の中に、「三井のリハウス」や「ららぽーと」といった事業ブランドが並んでおり、相互に影響を及ぼす構造となっています。
一方で、ブランドをきちんと統合的に管理することは大変であり、意思決定にも時間がかかる部分もあるかと思います。

ADK MS 吉川友英(以下、吉川):「三井不動産が好きだから各ブランドが好き」「各ブランドが好きだから三井不動産が好き」。これはどちらもあり得る、ある種の鶏卵の関係性であり、とても大切なことですね。
我々はこれを「支援」と「貢献」の関係と呼んでいます。
三井不動産の場合、タレントを中心としたコミュニケーションを行うことで、各事業ブランドに対してもポジティブなイメージが作られています。


中村:そして、ADKグループでは「ファングロース」という戦略を掲げていますが、これはいわゆるビジネスグロースそのものです。1つのブランドのファンをどんどん増やして育てていくというナレッジを、さまざまな業種のブランドにソリューションとして提供できないかと考えており、これが持続的かつ非連続的なビジネス成長の鍵であると捉えています。

例えば、ファンの構造を可視化・理解する仕組みや、ファンを生み出して育てる仕組み、ファンと共創する仕組みといった、様々なバリエーションでの開発を行っています。

「三井不動産を好きな人はどんな人?」「三井不動産のどこが好きなの?」といったファンの構造を理解し、どんな体験や情報を提供すればさらに好きになってもらえるのか。さらには、ファンから周囲にどう広がっていくのか、ファンでい続けてもらうには何が必要なのかを、データを使って分析しています。

先ほどもお伝えしたように、マーケティング活動によって三井不動産の企業好感度を高め、グループ全体にポジティブな影響を及ぼすことが我々のゴールです。顧客の解像度を高め、各事業との相互影響がどのように起きているのかを明らかにすることが、複雑なPDCAを回すための第一歩となります。

好感度を高める、構造化までの2ステップ

続いて、具体的な取り組みの中身に関するセッションとなります。
好感度を高めるための取り組みを、2つのステップで捉えています。ファーストステップでは、ブランド広告のPaidのメディアプランを最適化し、セカンドステップではPESOメディアの相互の関係、全体での最適化を図る。近年はインスタグラムやXなどのシェアードメディア、ホームページなどのオウンドメディア、そして第3者による記事や番組での取り上げといったアーンドメディアが台頭しているため、各接点での施策の有効性や連動性を可視化することが重要となります。


中村:我々がまず最初に行ったことは、三井不動産のシリーズCMの広告投下量と企業好感度に関連があるかを分析することでした。結果、これらには有意な相関があり、到達率を向上させることで、より好感度が高まることが分かりました。

その中でも、「ヘビーテレビ層」、「ミドルテレビ層」、「ライトテレビ層」と、視聴時間によって3段階に分けた分析を行うことで、テレビの視聴傾向によって同じデモグラ内でも大きな到達量格差が存在することが分かりました。

ADK MS 窪田亮一(以下、窪田):次に、PESO全体での施策の有効性や連動性を可視化することも非常に重要であることから、接点ごとの有効KPIの特定とリソース投資の優先度を判断するために、今年「三井不動産PESO MARKETING MODELプロジェクト」をスタートさせました。
どの指標が重要施策(企業好感度)に寄与しているのか?企業好感度と各指標はどのような関係性なのかを相関分析/回帰分析/機械学習などで明らかにしていく、企業好感度に貢献するアクションを生み出すためのモニタリング体制を構築していきました。

ただデータ、データと言われると難しく感じられてしまいますが、我々は難しいことを分かりやすく伝えることを常に意識し、そのリソースを理解していただくことも含めて、伊藤さんたちと伴走して一緒に取り組んでいってます。

構造化のステップとしては、
● STEP0:クライアント・ADK社内からデータを網羅的に収集し、データの内容理解。整理・整形・環境整備
● STEP1:KPI同士の相互関係と企業好感度に対する影響度と重要度を把握してKPI構造化を可視化
● STEP2:企業好感度1%形成に必要な各重要KPI量の予測モデル作成
● STEP3:KPI構造の精緻化・ペイドメディアの寄与検証を目的としたDeepDrive分析
となります。

STEP0~3までを受けてアウトプットを行うのですが、この時に難しいことを言ってクライアントが判断できないと基本的には意味がないと思うので、初見で見ても分かりやすくするよう心がけています。


伊藤:私だけが理解していても意味がないので、他のチームメンバーでも使いこなせるようなモデルに仕上げることを意識して進めて頂くようお話ししていましたが、結果、モデル化して非常に分かりやすくなりました。

不都合な真実に背を向けず、データと向き合い、正しい認識で入口に立つこと

最後に、本プロジェクトに関する所感をそれぞれ伺いました。

中村:定量化するための条件は3つあると思っていて、1つ目はデータがきちんとあること。2つ目はそれを我々パートナーと共有し合える信頼関係があるとこと、そして3つ目がクライアントの意思が1番大事だと思っています。どういう意図なのかというと、セクショナリズム超えて本当に正しい方向に進んでいこう、という意識です。分析を進めていくと、例えば、今までやっていた広告の効果がなかった、など、どうしても不都合な真実を見つけてしまうことがあります。

そして、我々は導かれた結果に対して真摯に向き合って、課題を見つけて提案すること。
提案する上では、広告以外の領域をしっかり踏み込んで提案することです。いろんなやり方があるので、それを組み合わせて本当にパートナーとしていい提案ができるかということが大切だと思います。

伊藤:このプロジェクトの肝は3点。まずやはり入口のところだと思っています。
初めに分析してもらった、「広告出稿すると好感度が上がる」ということを証明してくれたのはADKでした。広告出稿する際、「出稿すると認知が上がってなんとかでこうなりますよ~」という話はよくありますが、ADKのように、真に振り返って成果を語れる人は今までいませんでした。きちんとファクトで説明してくれたことが大事だったと思っています。
仮にこれが不都合な真実だとしても、まず正しい認識で入口に立つことができなければ、何も始まらないという点が、このプロジェクトの醍醐味だと思っています。

そして、正直言うと、好感度が上がる仕組みは自体は完全には解明できていないのですが、だからといってあきらめるのではなく、分かるものはとことん証明することが重要だと思っています。
1つ1つのデータで相関が取れるものは相関を取る。そして、トライアンドエラーで1つ1つ潰していくと。このプロセスは永遠に終わらない、終わりなき旅のようなものかもしれませんが、そのプロセスが本当に大事だと思ってるので、誠実に対応できるパートナーと組むことがいかに大事かをお伝えしたいです。

そして最後に、副次的な効果として、KPI構造図を導入してから、チームメンバー全員が施策の目的やKPIについて会話が出来るようになり、チーム全体のレベルが上がりました、今後グループ全体にも広げていきたいと思っています。


ADK MSでは今後もさまざまなテーマで、皆様のマーケティング活動における課題解決のヒントをお届けできるよう進めてまいります。
本セミナーに関するお問い合わせについては以下よりお気軽にご連絡ください。
担当の営業および専門スタッフが個別のご相談・課題に回答させていただきます。

<本件に関する問合せ先>
株式会社ADKホールディングス 
経営企画本部 PR・マーケティンググループ 根岸/内山 e-mail:mspr@adk.jp

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