コラム
ちいさいきみと –ちいきみ– 【第1話】
2024.10.22
子どもが生まれた、コピーライター10年目。ちいさいきみと見ている景色を言葉と絵にして。
育児同志に、「ホッ」を。仕事仲間に、「へぇ!」を。あなたの励みになれたら嬉しい、
フリーペーパー『ちい告』のスピンオフ企画です。
「楽な道と大変な道があったら、後者をいけ」
比較的自由に育てられた私が、親に言われてきた唯一のことだと思う。その苦労が後々糧になるからという意味合いだろうが、今振り返るとなかなかの根性論な気もする。良くも悪くもその精神が染み付いて大人になった私は、楽だと思うことに時々強い恐怖感を抱く。
育児も、そのひとつ。子どもが8ヶ月になる今年の4月。「0歳のほうが入りやすいから」というフレーズを、聞かれてもいないのに言い訳のように唱えつつ、保育園に入園。
正直、すごく楽になった。育児のプロフェッショナルに日々みてもらえる安心感。自分の時間が生まれる余裕。元々好きだった職場に復帰し、本来の自分を取り戻すような感覚。まるで、子どもなんていないみたいに。
喜ばしいことなのに、すごく悪いことをしている気分になった。わが子はこれで幸せなのだろうか?家では、絶賛後追いの時期。いつだって私について回って、夫に抱っこを引き渡そうとすれば腕をひしと掴んで拒むくらい、母という存在を必要としているのに…。
愛情不足で、将来非行に走ったらどうしよう!?保育園の先生をお母さんだと思うようになったら!?などなど、ありもしない妄想に取り憑かれ、「いい母親 なるには」でググる日々。
そんなある日、思った。「いい母」を目指そうとするからいけないんだ、と。そもそも夫も、ばぁばも、じぃじもいるのに。なぜ自分だけ「いい母」を目指さなきゃいけないんだ?子の面倒を愛情をもってみてくれるなら、私に限らなくたっていいじゃないか。つまり、「いい保護者」でいればいいんだ。子は言うまでもなく大切で、愛おしい。重々承知していても、現実の毎日はその気持ちだけではやっていけないから。 食事を用意し、危険から守り、今日いちにち無事に生命を維持する。ただただ保護する。そうしてゆっくり、よき母になる。それできっと、上出来なんだ。
『ちい告』とは。
広告されない、ちいさなモノゴトマガジン『ちい告』。
時が経てば忘れてしまう「クスッ。」や「キュン!」を手のひらサイズにギュギュッとつめこんだフリーペーパーです。
(ADKグループから不定期発行。次号も準備中です!)
【共同編集長】片岡良子(CHERRY)・川瀬真由(ADKマーケティング・ソリューションズ)
【デザイン】大橋謙譲 (CHERRY)
イラスト:大塚 文香