コラム

脱炭素コミュニケーションの新戦略。重要なのは生活者目線。

SCSK主催「温暖化防止に向け企業ができること」セミナーレポート

気候変動問題は今や企業の持続可能性を左右する非常に重要な課題となっており、脱酸素への取り組みはもはや選択肢ではなく、必須の経営戦略となりつつあります。
また、CO2排出量の削減は企業の社会的責任として求められるだけでなく、持続可能な未来への投資でもあります。そして、その取り組みの成果をどう社会に発信し、透明性を確保するかが企業価値を高める大きな鍵となります。
生活者や投資家が求めるのは、数値的な目標の達成ではなく、継続的なコミュニケーションと信頼性のある行動です。

10月9日、SCSK株式会社主催の「温暖化防止に向け企業ができること」に株式会社GXコンシェルジュと共にADKマーケティング・ソリューションズ(以下「ADK MS」)サステナビリティ・ソリューショングループの有泉 昌が登壇。生活者目線の「脱炭素コミュニケーション」について考え方や発信する上でのポイントについてお話しましたので、本セミナーのレポートをお届けします。

脱炭素コミュニケーション。重要なのは生活者目線と攻めのコミュニケーション

SCSK様は、企業向けの気候変動管理・会計プラットフォーム「PERSEFONI」の最初の国内代理店であり、事業を通じた社会課題解決により、社会と共に持続的な成長を図る「サステナビリティ経営」を推進しています。また、ADK MSも、脱炭素関連の課題を独自の手法で解決する「カーボンニュートラル推進支援プロジェクト」において、「PERSEFONI」との協業に合意し、企業における脱炭素課題の解決を支援しています。今回のセミナーは「PERSEFONI」を推進する同じ志を持つSCSK様にお声がけいただき、登壇の機会をいただきました。

私の所属するサステナビリティ・ソリューショングループでは、日々、クライアントのサステナビリティ領域の業務支援をしております。今回は“生活者目線”をポイントに、脱炭素コミュニケーションの考え方や発信方法についてお話させて頂きます。

現在、多くの企業にとって、脱炭素関連のコミュニケーションは、主に投資家や金融機関からの評価を得ることを目的として行われているケースが多いと思います。しかし、最近では「マルチステークホルダー」という表現があるように、投資家や金融機関向けだけでなく、メディアや取引先企業、自社の従業員、就活生など、すべてのステークホルダーを今後は意識していく必要があります。

これらのステークホルダーの共通点は、それぞれが“1人の生活者”であるということです。

ADKでは2008年より関東・関西地区の男女15-79歳10,000名以上を対象としたオリジナル調査「ADK生活者総合調査」を行っており、その調査を元に昨年『SDGsに関する意識レポート』を発表しました。

その中で、SDGs実現に向けて、企業に求めていることに関して当てはまるものを聞いたところ、1位に「CO2排出量や削減量の見える化(43.6%)」、2位に「貢献できる商品・サービスの開発(40.4%)」が挙げられました。生活者が企業に求めていることは、分かりやすい情報発信、あるいは生活者を巻き込む具体的な行動、つまり「成果」や「貢献」の可視化がポイントとなることが分かります。

生活者総合調査2023『SDGsに関する意識レポート』より、「SDGs実現に向けて、企業に求めていること(複数回答)」
プレスリリース:https://www.adkms.jp/company/column/20240401-1/

これまでは、サステナビリティ関連の取り組みは積極的に知らせる必要はないのでは?と思われる方もいらっしゃったかもしれません。しかし、今後は社会全体に向けてコミュニケーション活動を行わないと、取り組み自体が誰にも知られず、その企業は「サステナビリティに関して何もやっていない」と見られてしまいます。

そういった事態を避けるためにも、対外的に積極的に知らせること、つまり、今までの投資家や金融機関からの評価を得るための「守り」のコミュニケーションだけでなく、今後は「攻め」のコミュニケーションも行うことによって、その企業自体の持続可能性に繋がってくると考えています。
そうなると、投資家や金融機関だけでなく、すべてのステークホルダーが対象となり、冒頭で申し上げた生活者目線がより重要となってきます。

脱炭素コミュニケーションにおけるポイント

脱炭素コミュニケーションにおいて、大きく開発・発信と分けられ、それぞれ3つのポイントがあります。

<開発>

① 気づき
脱炭素と言えば、最初にやるべきこととして「自社のCO2排出量の算定」が挙げられますが、Scope3やカーボンフットプリントの算定など、さらに深掘りして可視化する取り組みが重要となり、この取り組みのプロセスを共有することで、生活者が日常生活の行動における環境や社会への影響を理解しやすくなります。
② 共感
自社の企業理念を踏まえた取り組みを打ち出していくことが必要となります。その企業ならではの理念に基づいたストーリーを組み立て、活動を発信することで、生活者もその製品やサービスの社会的意義や影響を理解しやすくなります。
③ 共創
脱炭素をはじめとする社会課題は、1企業だけの取り組みでは解決することはできません。取引先やパートナー、生活者など様々なステークホルダーを巻き込みながら、社会課題の解決に向けて「共創」することで、客観性の確保にも繋がり、生活者がその取り組みを信頼しやすくなります。

<発信>

① 透明性
まずは「透明性」、つまりリスクマネジメントが重要になってきます。裏付けのない環境主張や、一部のみしか該当しないのに全体の環境主張を行うといったことは注意が必要で、グリーンウォッシュにならないよう、透明性を担保したコミュニケーションを通じて生活者との信頼関係を築いていく必要があります。
② 把握
発信する上では、当然ながらメディアが絡んできます。一般の報道関係者にとって、サステナビリティや脱炭素の取り組みは社会課題の解決策として報道価値が高いと考えています。一方で、生活者にとっての難易度や、最終的に取り組みがどのような結果をもたらすのか、という不透明さを感じ、報道の際には取り上げることをためらう場合があります。したがって、報道関係者のインサイトもしっかり把握した上で対話をしていくことが非常に重要となります。
③ 設計
そして、報道関係者のインサイトを踏まえた上で、 どのように適切なコミュニケーションを設計していくか。
この課題を解決するために、ADK MSでは8月にPR戦略コンサルティング会社とTaktoと協業して「SXコミュニケーションサポートプラプログラム」を開始しました。
我々サステナビリティのプロと、PRのプロがチームとなり、クライアントのサステナビリティ・脱炭素関連の活動を価値のある形で社会に伝わるよう、メディアと対話しながら、その企業ならではの適切なコミュニケーションを設計していくものになります。ステップとしては現状の分析、リスクの診断をさせていただき、実際どのようなコミュニケーション戦略や施策をプランニングしていくか、最終的にはこの施策の実行、アウトプットまで一気通貫で設計しております。
プレスリリース :https://www.adkms.jp/news/20240827-2/

    脱炭素コミュニケーションに関しては、まだ先の話、と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、いずれコミュニケーションしなければいけない状況がやってきます。サステナビリティへの取り組みは「コスト」という風に今は捉えがちですけれども、「企業の価値向上のためのビジネスチャンス」とポジティブに捉えて頂き、先行して早めに開発・発信していくことにより、他社に先駆けた積極コミュニケーションによる競争優位を図るといった考え方が重要かと思います。

    ADK MSは今後も、総合的なアプローチによって、クライアント企業の変革と持続的な事業成長に貢献してまいります。

    <プロフィール>
    有泉 昌
    ADKマーケティング・ソリューションズ EXデザイン本部
    EXコンサルティング局 サステナビリティ・ソリューショングループ
    プランニング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

    外資系企業のアカウントディレクション&プランニング業務に従事後、クリエイティブプランニング部署へ。
    CMやグラフィック等のマス広告開発だけでなく、プロモーションやデジタルなどアクティベーション活動の企画/実行まで、領域や手法に捉われないニュートラルな視点でのプランニングを実施。様々な企業のサステナビリティ関連活動の企画案件にも携わってきた実績をもつ。

    [サステナビリティ関連 保有認定資格等]
    一般社団法人 日本広告業協会(JAAA) CSR委員
    Start SDGs認定 CSV経営デザイナー (CSV型経営導入コンサルティング)
    SDGパートナーズ認定 SDGsエキスパート
    環境省認定制度 脱炭素アドバイザー ベーシック
    SDGs検定/SDGs@ビジネス検定上級/ユニバーサルマナー検定/D&I検定/キッズコーチ検定 など

    <サステナビリティ・ソリューショングループについて>
    サステナビリティ・ソリューショングループは、ADK MS EXデザイン本部 EXコンサルティング局の組織です。
    EXデザイン本部は、「ワクワクする顧客体験」の創造をミッションに、顧客体験向上における課題を見極め、解決策や方針を策定し、ソリューションを企画します。また、これら一連のプロセスをクライアントとともに伴走型で取り組みます。
    サステナビリティ・ソリューショングループは、コンサルティングからエグゼキューションまで、クライアントのサステナビリティ領域の業務推進を支援。「社会課題」と「クライアントのビジネス課題」を同時に解決していくことを目指しています。


    <本件に関する問合せ先>
    株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
     EXデザイン本部 EXコンサルティング局
     サステナビリティ・ソリューショングループ 有泉 e-mail:Sus_Sol_prj@adk.jp
     
    株式会社ADKホールディングス
     経営企画本部 PR・マーケティンググループ 内山 e-mail:mspr@adk.jp

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