コラム

AIファッションムービーで挑む、新たなAIクリエイティブの領域

NFFT2025_SS AI Fashion Movie展@渋谷PARCO イベントレポート

近年、AIテクノロジーは急速な進化を遂げており、今後の技術革新とそれに伴う社会の変化に大きな影響を与えると予想されています。マーケティングやコミュニケーションの分野でも、消費者との接点が多様化する中で、AIを活用することでより高度で効果的なマーケティング活動が実現でき、競争優位性を確保するための重要なツールとなっています。

ADKマーケティング・ソリューションズ(以下、ADK MS)は、AIに特化した社内横断組織「AI CoECenter of Excellence)」を中心に、AI戦略の一環として、自社内でのAI活用や対外的な価値提供に取り組んでいます。その活動の一環として、20241018日-20日の3日間、渋谷PARCOで開催されたAIファッション映像展示「NFFT2025_SS AI Fashion Movie展」への協賛および作品出展を行いました。

本記事では、本展示への協賛・参加を行ったAICoEの取り組みや、主催者兼AIクリエイターであり、23年に話題になったPARCOの初の生成AI広告でクリエイティブ・ディレクターを務めたSTUDIO D.O.G.の木之村美穂氏へのインタビューなどをご紹介いたします。

生成AIクリエイティブの新たな可能性を求めて

NFFTは2022年より始まり、今回で4回目の開催になるAIファッションイベントです。国内外で活躍する32名のAIクリエーターが参加し、「NFFT2025_SS」のコンセプトである「Regeneration」をテーマに、最新の生成AIを駆使して新たなファッションを表現したAIファッションムービーが公開されました。

これまでAICoEでは、本年度の入社式で社長のAIアバター「AI-CEO」が新入社員を歓迎するAI体験の実施や、社内向けAIチャットボット「トラポケ」の開発・運用をはじめ、生成AILLMに限らず拡散モデルを含む)の「現場実務レベルまで徹底的に落とし込んだ社内活用」 「日々向き合うクライアントへの新たな価値提供」の両輪でソリューション開発および推進を担っています。その一環として、社内のクリエイターやプランナーが自由な発想のもとで生成AIクリエイティブの新たな可能性を探求し、生成AIやデジタル・テクノロジーを活用した幅広いソリューションや体験デザインの提供方法を模索するため、協賛にとどまらず、作品の出展という形でもこのイベントに参加しました。

世界中で活躍するAIクリエイターの作品が渋谷に集結

展示期間中、渋谷PARCOの特設会場では、今回のテーマ「Regeneration」を基に制作された32名のAIファッション映像や、それらからインスピレーションを受けて制作されたファッションピースが展示されました。イタリア、ブラジル、東京などから参加したAIクリエイターは、主催者である木之村氏がInstagramなどでリサーチを行い直接スカウトした非常にレベルの高いクリエイターばかりで、それぞれ東京×ファッションという本展示のコンセプトに魅力を感じ参加表明してくれたとのこと。

ADK MSでは、6名のメンバーでAIクリエイティブチームを構成し、AIムービー「READY TO SURVIVE 2025 SS」を制作。この作品は、AIによるファッションの再生“Regeneration”をコンセプトに、近年の異常気象などの過酷な環境から身を守りつつ、過酷な環境を楽しむための未来のファッションの可能性を表現しています。

 
作品URL:https://youtube.com/shorts/lfP-4yhdZ3E

AI クリエイティブチームメンバー:
AI Creative Director 小塚仁篤 

Copy Writing 片岡良子
Movie Design/AI Design 小林巧実

Art Director/ AI Design 脇田樹

Prompt Direction/AI Design 鬼丸翔平
Project Coordinator 竹節珠加

クリエイティブチームを率いた AI Creative Director小塚コメント:
『個人レベルではなく、チームとして生成AIでの画像や動画制作に取り組んだのは今回が初めてでした。非常に短い制作期間でしたが、ブレストしながらその場でAI画像やAI動画を生成することで、企画イメージを短時間で具体化することができました。アウトプットをリアルタイムに検証しながら企画をブラッシュアップできる点が、従来のグラフィックやムービー制作と異なる点です。また、プロンプトの内容次第で生成AIのアウトプットが大きく変わるため、プロンプトのベースになるコピーライティングや企画コンセプトの重要性を改めて実感しました。

さらに、プロンプトを入力して画像を生成すると、予期しないアウトプットが偶然生まれることがあり、そのプロセスが非常に面白かったです。例えば、今回3つの都市を舞台にファッション画像を生成して動画化しましたが、「東京」「京都」に比べて「札幌」については生成AIのベースの学習データ量が少ないのか、異国のような風景が生成されるなど苦戦しました。最終的に、札幌というロケーション描写に拘るのではなく、北国における猛暑から身を守りながらおしゃれを楽しむためにはどのようなデザインや機能のファッションが適しているのかという議論にフォーカスすることができ、素材の質感にこだわったファッション映像が生成できました。

生成AIの技術は日々進化しているため、生成AIで企画イメージ通りの完璧な表現を作るというよりも、企画意図を逸脱したアウトプットや、生成AIならではの新しい表現などを楽しみながら、AIとの共創によるクリエイティビティの進化を目指して、さまざまなシーンで生成AIを活用していければと思います。』

(上段、左より)脇田樹、小林巧実、鬼丸翔平  (下段、左より)片岡良子、小塚仁篤、竹節珠加

リアルだからこそ楽しめる、「フィジタル」体験

2日目の19日の展示会終了後に行われたクリエイターミートアップ・パーティーでは、関係者など総勢350人以上が集まりました。会場では、今回参加したAIクリエイターによる作品紹介の場が設けられ、来場者との交流が行われました。また、AIからデザインを作り出し、実際のリアルファッションとして制作されたフィジタル*1作品を身にまとったモデルの登場、ダンスによるスペシャルパフォーマンスなど、会場は終始盛り上がりを見せました。NFFT2025_SS 渋谷パルコ10階コミューン レセプションパーティー

NFFTの主催者・AIクリエイター STUDIO D.O.G. 木之村美穂氏コメント:
『生成AIのテクノロジーは日々進化しており、常にアップデートされ続けています。本イベントは2022年から始まり、2023年までは主にAI画像を中心に作品を展示していましたが、今年に入ってからはAIムービーのクオリティが急速に進化し、非常に盛り上がりを見せています。このため、できるだけ早く皆さまに最新の生成AI表現を活用した作品をご覧いただきたく、急遽6月にNFFT2024 AW Collectionとして開催し、その半年後に今回のNFFT2025_SSも開催する運びとなりました。
このイベントの魅力は、何と言ってもそのクオリティの高いAI作品を、メタバースやデジタル空間ではなく、リアル空間で直接体験できる点です。今、これを実現できるのはNFFTだけではないかと思います。そして、今回も多くの方々にご来場いただき、その魅力を実感していただけたことを大変嬉しく思っています。
また、展示の中でも一部ご覧いただけたかと思いますが、生成AIでデザインしたデジタルファッションを、実際のリアルなファッションプロダクトとして具現化する「フィジタル」という新しい試みには、今後さらに注力していきたいと考えています。』

イベント後日、ADK MSでは社員向けに木之村氏より「AIクリエイティブ講座」が開催されました。終了したばかりのNFFT2025_SSを振り返りつつ、生成AIの最新動向やプロンプトのコツ、そして今後の展望についてもお話いただきました。今後第二弾の講座も開講予定です。
ADK MSでは、AICoEを中心に、今後も様々なパートナーやAI有識者と積極的に意見交換や実践的な取り組みを行い、生成AIを活用した新しい体験価値の創造に取り組んでまいります。

 1 フィジタル:デジタルとフィジカルの造語。デジタルで作った作品を、実際のモノに作ること。

NFFT2025_SS AI Fashion Movie展 概要
開催期間:20241018(金曜日)~1020(日曜日) 11時〜21
開催場所:渋谷PARCO 4階 特設スペース 東京都渋谷区宇田川町15-1
レセプションパーティー(渋谷PARCO 10階コミューン)
主催 : 木之村美穂
NFFT2025 実行委員会 :株式会社TYO / STUDIO D.O.G GK
参加クリエイター:世界で活躍する AI Creator (AI Prompt Director/AI Filmmaker )32
https://www.nfft.jp/

木之村美穂 Miho Kinomura
STUDIO D.O.G GK 代表
クリエイティブディレクター/ AI Prompt Director / AI Filmmaker
ファッションデザイナー出身。New York、Los Angelesにて、グローバルラグジュアリーブランドのファッション・化粧品の広告宣伝ビジュアル制作プロダクションSTUDIO D.O.Gの代表エグゼクティブプロデューサー、映像ディレクターとして広告宣伝を数多く手がけ、ファッション・ビューティー専門の広告プロダクションとして、長いキャリアを持つ。2021年11月、Web3.0に対応したNFT メタバース ファッションを専門に扱う会社をLos Angelesで立ち上げ、アメリカで新規事業に取り組む。現在はデジタルクリエーターや、AIクリエーターのグローバルキャスティング・メタバース広告制作やAI 企画プロデュースなど幅広く取り組んでいる。最近では日本の広告業界・ファッション業界向けNFT初心者セミナーなどを企画・主催。Los Angeles 在住。https://www.mihokinomura.com/
小塚仁篤
EXデザイン本部/SCEHMA
クリエイティブ・ディレクター/クリエイティブ・テクノロジストデジタルやテクノロジー分野での経験を武器に、未来志向のクリエイティブ開発やSFプロトタイピングを得意とする。主な仕事に、障害者の社会参画をテーマにした「分身ロボットカフェDAWN ver.β」(オリィ研究所)、未来ミュージアムを未来をつくる実験場に進化させるスローガン「Mirai can_!」(日本科学未来館)、微弱な電気のチカラで減塩食の塩味やうま味を引き出していく食器型デバイス「エレキソルト」(キリンホールディングス)など。 Cannes LionsCES Innovation AwardsPrix Ars ElectronicaD&ADSPIKES ASIAADFESTMADSTARSACC、メディア芸術祭、グッドデザイン賞ほか受賞歴多数。JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー2020メダリスト。

<本件に関する問合せ先>
株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
 EXD本部 第2EXクリエイティブ局 小塚
株式会社ADKホールディングス 
 経営企画本部 PR・マーケティンググループ 伊藤/根岸/大沢 e-mail:mspr@adk.jp

 

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