コラム
「矛盾してこそ愛、 なのかも。」
ちいさいきみと –ちいきみ– 【第3話】
2025.02.28
子どもが生まれた、コピーライター10年目。ちいさいきみと見ている景色を言葉と絵にして。
育児同志に、「ホッ」を。仕事仲間に、「へぇ!」を。あなたの励みになれたら嬉しい、
フリーペーパー『ちい告』のスピンオフ企画です。
「RSウイルス、1名感染中」
保育園の掲示を見て、はじめて知ったその感染症。調べてみると、2歳になるまでにほぼ100%がかかると書いてある。へぇ、なんて思っていたのも束の間。1歳半になるわが子も、あっという間に患うことに。40度を越える熱。肺炎に繋がることも少なくないと聞いて、小児科を受診する日々に。幸い大事には至らず、5日目には解熱。安心して眠りについた翌日だった。
朝5時から2時間、ノンストップで大号泣。涙を拭こうとすれば手を振りほどかれ、抱っこを求めるので応じれば叩く。普段あまり泣くこともなく、穏やかだと思っていたわが子が別人のよう。友人に相談すると「病み上がりの不機嫌」というのはよくあることだそう。育児は知らないことだらけだなと思いつつ、むしろこの不機嫌が大変だった。
食べない、飲まない。脱ぎたくない、着たくない。そして何より、とにかくママじゃなきゃイヤ!!!そんな状態なので、子どもが起きている限り仕事はほぼ無理。打ち合わせ欠席の連絡をすると「仕事の代わりは利いても、ママの代わりは利かないから」と温かいお返事…(涙)。
ありがたい一方で、苦しかった。自分ができなかったことを、他の人がやってくれる申し訳なさ。プレゼンに貢献できなかった悔しさ。もう案件に呼ばれないのでは、という焦り。早く保育園に行ってくれないかな、早く日常が戻ってくればいいのに。そう思う気持ちとは裏腹に、解熱して1日経っても、2日経っても、通報されるんじゃ?と思うほどのギャン泣きが続いた。
ところが、解熱4日目の月曜日。起きた瞬間からニコニコ。朝ごはんは完食。スムーズに着替え、支度を完了してくれた。これで仕事ができる!ホッとして登園すると、久々の保育園に大泣き。それでも、自分で靴を脱いで、下駄箱にしまって。大人しく、先生に絵本を読んでもらって。遠くから「行くね」と声をかける。すると、止まりかけていた涙でみるみる目がいっぱいに。口をへの字にしながら、精一杯、無言で「バイバイ」と手を振るわが子。あんなに早く保育園に行ってほしい、と願っていたのに。連れて帰りたくなる自分がいた。
子育てはつくづく、矛盾の連続だ。可愛いのに、飽き飽きするし。ずっと一緒にいたいのに、もっと自分の時間が欲しい。「愛」。あまりにも大きな概念でいまいちピンとこず、特にコピーライターになってからは使うことを避けてきた言葉だけれど。矛盾してこそ「愛」なのかなーー。子育てを通じて少しだけ、その実態が掴めたような気がしている。
『ちい告』とは。
広告されない、ちいさなモノゴトマガジン『ちい告』。
時が経てば忘れてしまう「クスッ。」や「キュン!」を手のひらサイズにギュギュッとつめこんだフリーペーパーです。
(ADKグループから不定期発行。昨年末に発行した第9号は書店やギャラリー、カフェなどに加え、ADKでも配布中。)
【共同編集長】片岡良子(CHERRY)・川瀬真由(ADKマーケティング・ソリューションズ)
【デザイン】大橋謙譲 (CHERRY)
イラスト:大塚 文香